「お前に命をくれてやる・・・!」

目が覚めた時、俺は道路の真ん中に突っ立っていた。

今まで何をしていたのか、全く分からない。

ただ、いつもの景色が微妙に変化している。

あそこにあった筈の空き地はには、立派な門構えの家があり

此処にあった大きな家は駐車場になっている。

何がどうなっているのだろう。全く分からない。




確か・・・手首を切って・・・気を失っていたような気がする。

そこからが、思い出せない。

俺が気を失っている間、一体どうなっていたのだろう。


プップー!



車のクラクションがなった。

「バッカヤロー!何処見てんだ!」

いかにも、酒で酔っているような感じのおっさんが怒鳴った。

そして、猛スピードで走り去った。

「ん・・・?あの車どっかで見たような・・・」

俺の記憶にかすかに残っているあの車。

何処にでもありそうなただの軽自動車なんだが、

普通のとはちょっと違う。何処だったっけ・・・

何でだろう。思い出せない。

こんなにも思い出せない自分が腹立たしい。

俺は猛スピードで走るその車を見続けていた。


今の俺には何も分からないし、思い出せない。

ただ・・・

暗闇の中で囁かれたあの言葉。

「お前の命は一週間だ。使命を果たせ。

 そして、仲間を捜せ。共に生きろ。」


頭の中にハッキリと残っている言葉。

意味がよく分からないが・・・

ハッキリと覚えている。



あの言葉が本当だとすると、俺の命は後一週間。

そして、俺のような奴がまだ居る。



・・・何故だろう。

顔も名前も何も知らない筈なのに、

何だかもう、すぐ傍にいるような気がする。

これから共に生きていく、

「「あ・・・」」

本当の『友達』に。




1話 出会い




俺がただ、何となくボーッと見ていた視線の先に一人の男が居た。

中学生か、高校生。遠いから、良く分からないが・・・

俺はそいつをじっと見ていた。

何だろう、コイツ。

周りの人とは明らかに何かが違う。

何かが違う。言葉では言い表せない何かが。

確かに見かけそのものも少し変わっている。

髪の毛は男のくせに、結構長くてオタクっぽい。

それに、天然パーマで服も地味っぽい。

それだけじゃない。アイツは何かが違う。

俺が見ているのと同様に、その男もずっと俺を見ていた。

と、その男が俺の方に向かって歩き始めた。

50m、30m・・・

男は俺の方に向かって歩いてくる。

いや、もしかしたら次の角を曲がるかもしれない。

しかし、その男は俺の方へ真っ直ぐ向かってきた。

20m、10m・・・

よく見るとそいつは眼鏡もかけていた。

でも、その眼鏡もボロボロ。

冗談でも金持ちに見えるとは言えない奴だった、。

5、4、3、2、1・・・

男の足が止まった。

「あ、あの・・・」

弱弱しい声で俺に話しかけてきた。

「お、俺に何か用でもあるん?」

「い、いや・・・そ、そうなんですけど・・・」

ハッキリしない。男ならもっとシャキッとしろ。

俺が親父にいつも言われている言葉を、心の中でコイツに叫んだ。

「もしかして、お前も・・・」「もしかして君も・・・」

声が重なった。

絶対そうだ。間違いない。

コイツも、多分さっき急に目覚めた奴なんだ。

俺と同じように、何も覚えていない

弱い人間なんだ―――


++++++++++


「ふぅーん。お前、壮太(そうた)っていうんか。」

「うん。き、君は?」

「俺?俺は清一。歳は15歳。よろしゅぅに。」

「あ、よ、よろしく。っていうか清一君って出身地何処?何で関西弁なの・・・?」

「あ、俺自体は・・・で、父さんが・・・」

俺は中学1、2年の成績が良かった為、

親に期待されていて、口癖は決まって「勉強しなさい」だった。

親の期待を裏切る訳にもいかないと思い、俺は勉強だけを頑張った。

部活も辞めた。友達とも遊ばなくなった。

始めは成績も良かった。

だが、段々と俺の成績は下がってきた。

俺は、ますます勉強に励んだ。

その時、既に友達と呼べる奴は一人も居なかった。

上手くいかない。話していても楽しくない。

でも

「・・・へぇー。だから清一君は関西弁なんだ。」

今、俺は壮太と話しているのが楽しい。

「まぁな。っつーかそんなん今どうでもえぇやん?」

上手くいかないという訳じゃない。

「そ、そだね。じゃぁ本題に戻そうか。」

・・・何か嬉しい。

こんな気持ち初めてというか忘れていたような気がする。



ドクン




急に俺の心臓の鼓動が早くなった。

「そ、壮太・・・」

「ん?ど、どうしたの?清一君?」

体に・・何か走っている・・・

「お、お前って何で自殺したんや?」

「え?」

「何で自殺したんやお前は?」

「そ、それは・・・」

え?

ち、違う。

こんな事を言いたいんじゃない。

なのに、

なのに、口から勝手に言葉が漏れてしまう。

理由は分かっている。

聞いた訳じゃないが、何となく分かるんだ。壮太を見ていれば。

なのに、俺は訊いている。

壮太に何故自殺したのかを問い詰めている。

壮太がどう答えるのか知りたい。

壮太がどんな表情になるのか見たい。

困れ。もっと困れ。

苦しめ。もっと苦しそうな表情になれ。

未だかつて感じたことのない、感情が俺を支配していた。

別に、壮太のことが気にくわない訳じゃない。

かといって、俺が元々こういう奴だったという訳でもない。

なのに、今は壮太の苦しむ姿が見たくて見たくて仕方がない。

壮太は、うつむいて完全に黙り込んでしまった。

理由は分かっているのに

それを無理矢理言わせようとしている自分が居る。

この乱暴とも凶暴ともいいつかない気持ちが

俺の体全体を支配していた。



と、その時。





「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」


妙に低い泣き声が、周りの道路一帯に響き渡った。

その声で俺はハッとして、我に返った。

今まで俺は何を考えていたんだ?



数秒前の自分が恐ろしくなって、一瞬鳥肌がたった。

「せ、清一君!」


「へッ・・・は・・・え?」

フイをつかれて、驚いている俺に、壮太はデブの方を指さした。


うわぁぁんッ!ママァァ!!

デブは泣き喚くことをしらない。多分コイツも中学生ぐらいだ。

でも中学生でママって・・・


わぁぁぁぁぁん!!誰かぁぁぁ!

周りの迷惑も知らないんだろうな。こいつは。

「ホンマ、えぇ歳こいてあれはないよなぁ、あれは・・・」

「ち、ち、違うよ!清一君!よく見て!」

「は?」

よく見ろって・・・このデブを見つめろってことかよ。

でも、壮太がくだらないことを言うとは思えないので、渋々そのデブを観察した。

・・・なんだろう。

妙に親近感が湧いてくる。

親近感・・・?いや・・・違う。そんなんじゃない。

「壮太・・・もしかしてアイツ・・・」

「う、うん。た、多分だけど・・・僕達みたいな人だと思うよ。」

「ほ、ホンマに・・・?」

確かに周りにいる奴とは違う。


此処何処だよぉー!ママァァァァ!!!


こんな台詞を街中で叫び続けること自体、普通ではないがそうじゃない。



・・・認めたくないが、

認めたくないが、壮太の言う通りアイツも俺達と一緒だ。多分。

「ママー!」

・・・本当に認めたくないけど。

「せ、清一君!ど、どうする?」

壮太がオロオロしながら、俺の目を見た。

「ど、どうするって・・・ちッ。しゃーなしやで。」

舌打ち一つして、俺はデブの方へと近づいた。





ママー!




やかましいわっっっ!!!

デブの奇声にも負けぬ、大声でデブを圧倒した。

「やかましいわお前っっっ!!黙れ!!!」

デブは泣き叫ぶのをやっと辞めた。

「う゛っ・・・う゛っ・・・な、何だよォ、お前はァ!」

「清一って言うお前みたいな奴じゃ。アホ。」

「ひっ、ひっぐ・・・お、同じって・・・」

「お前も一回死んだんやろ?でも急に目ぇ覚めたんやろ?」

「え・・・お、お前もなの!?此処何処!?ママは!?ママは!?」

「知るかいっ!ちょっとは黙れやっ!」

「う、う゛わぁぁぁぁぁんっっっっっ!!!」

「泣くなぁぁぁぁぁぁぁ!!!
やかましわ!

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